慢性便秘症対策のツボ。
健康で元気に快適な生活を送る上で欠かせないものを
3つ挙げるとすれば、「快食」「快眠」「快便」であります。

こうした生きるために必ず行うサイクルがあってこそ、
日々変わることなく心身共に健康が保たれているという
訳であります。

ですから、「食欲不振」「不眠」「便秘」というものは、
快適な生活を妨げる要因と言えるわけであります。

その中で、今回は「慢性便秘症」について取り上げて行きます。
慢性便秘症診断ガイドライン2023によりますと、便秘とは
「本来排出すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状態・硬便、
排便回数の減少や糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、
残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」
と定義されております。
※怒責・・・排便時などに下腹部に力を入れること。
また慢性の定義は「6カ月以上前から各症状が発症し、
最近3か月間はその症状が持続している」こととあります。

慢性便秘症の有病率は、およそ日本国民の約15%とされており、
全体的では男性よりも女性の方が多く、70歳以降では性差はなくなります。
便秘の発症リスクとしては、性別(女性が多い)・身体活動性・主観的健康度・
腹部手術歴・特定の基礎疾患・加齢・薬剤といったものが関連しております。
慢性便秘症の原因となりうる基礎疾患としては、糖尿病・甲状腺機能低下症・
膠原病・パーキンソン病・うつ病・消化器の腫瘍・巨大結腸・痔核などがあります。
※身体活動性・・・安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する
骨格筋の収縮を伴う全ての活動のこと。
※主観的健康・・・医学的な健康状態ではなく、自らの健康状態を
主観的に評価する指標のこと。

また東洋医学では、便秘のことを「大便秘結」と呼び、
便秘原因の違いにより「熱秘」「気秘」「虚秘」「冷秘」
に分類されております。

熱秘・・・飲酒・脂っこいもの・辛いものなどを
摂り過ぎたりしたことにより津液を損傷し、
結果胃腸が乾燥して熱くなることにより生じる。
症状としては、口が渇く・口臭・赤ら顔・のぼせ・ニキビ吹き出物
などがあり、便は硬い乾燥便となる。

気秘・・・ストレスや長い期間動かなかったことなどにより、
腸の働きが低下することにより生じる。
症状として、便は硬く乾燥し、便意はあるが残便感がある。
便の形状は一定ではなく、ゲップが頻繁にあり、お腹の張りや痛みを伴う。

虚秘・・・気虚と血虚により生じる。
気虚は過労などにより全身に巡らせる機能が低下して生じるもの。
血虚は長患いや産後などに腸内の潤いが失われて生じるもの。
症状として、
気虚は便の出始めが硬く、後に緩くなる。いきんでも
滑らかに排便されない。疲労感・倦怠感・息切れ・自汗がある。
血虚は兎糞状の便となり、顔色に艶なく、めまいなどの症状がある。
※気・・・人体を構成し、生命活動を維持する極めて細かい物質のこと。
※血・・・血脈中を流れる赤色の液体で、豊富な栄養分を有している。
※気虚・・・気が不足・消耗したために、働きが機能しなくなった状態。
※血虚・・・血の不足・滋養する働きが少なくなった状態。

冷秘・・・身体の冷えにより、温める働きが低下することで生じる。
症状としては、排便困難であるが便は緩い。お腹や手足の冷えを伴う。

慢性便秘症は、統計的に見ましてもクオリティオブライフ(QOL)や
労働生産性の低下をもたらし、その経済的損失は年間約120万円に
相当すると報告されております。

更に便秘が続くことで、排便時に過度のいきみにより排便失神しやすくなり、
心臓への負担もかかりやすくなります。腸内細菌叢の異常(ディスバイオシス)の
異常により腸内代謝物が変化しており、動脈硬化や心血管疾患などのリスクも
考えられます。
※クオリティオブライフ(QOL)・・・人々の生活を物質的な面から数量的に捉えるのではなく、
精神的な豊かさや満足度も含めて、質的に捉える考え方。生活の質。人生の質。生命の質。
※腸内細菌叢(腸内フローラ)の異常(ディスバイオシス)・・・有益な菌(善玉菌)が減少したり、
有害な菌(悪玉菌)が異常増殖したりするといった、腸内細菌叢のバランスが乱れた状態のこと。

ということで、
今回は「慢性便秘症対策のツボ」を幾つかご紹介します!

体は声を発しませんが、
代わりに痛みや辛さで訴えてきます。
どのツボが良いかと迷われる時は、
今回紹介しましたツボの中から今の自分が気になったり
痛かったりする場所に近いところを選び、
まずはお灸やツボ押しをしてみてください。

腸の動きを良くする・・・足三里・中髎
便通を良くする・・・大腸兪・天枢・上巨虚
熱秘による便秘・・・内庭・曲池・合谷
気秘による便秘・・・太衝・合谷・内庭・肝兪
虚秘による便秘・・・
①気虚による:(肺気虚)合谷・足三里・肺兪 (脾気虚)陰陵泉・脾兪 (腎気虚)気海・腎兪
②血虚による:(血虚)足三里・三陰交・膈兪 (陰虚)復溜・太渓
冷秘による便秘・・・(脾陽虚)足三里・関元 (腎陽虚)太渓・腎兪

各ツボは、アメーバブログ 「はりとお灸の豐春堂ブログ」の木曜コーナー
「お灸をしよう!」にリンクしております 。

また日頃の対策としましては、
バランスの良い食事
十分な睡眠と休養
適度な運動
ストレスを溜め込まない
といった生活習慣と環境の見直しをしてみましょう。

食事面では、水溶性食物繊維が豊富な食品を摂りますと、
水分を吸収して膨れ、便をかさ増ししますので、
腸の動きを刺激してくれます。
但し、大腸の通過が遅い或いは便の排出障害がある方は、
食物繊維を摂取し過ぎて逆に便秘が悪化する場合が
ありますので注意してください。

また一日一回以上はトイレに行き排便を習慣づけておきましょう。
例えば朝食後、朝バタバタしていてトイレに行くタイミングを
ついうっかり逃すことも便秘のリスクとなります。
便意を感じたら我慢せずに排便を心掛けることが大切です。

排便時の姿勢も前傾姿勢をとりますと、便が輩出しやすくなります。
排便時にはいきむ動作が必要となります。
いきむことで横隔膜と腹筋を収縮させて腹圧を高めると同時に、
膀胱・子宮・直腸などの臓器を下からハンモックのように支えている
骨盤底筋群を緩めることによりスムーズな排便がされております。

スムーズな排便の為には、腹筋運動を行って腹圧を高めたり、
肛門を締めて緩める運動を取り入れるにより、
骨盤底筋群の緩む感覚を身につけておくことも対策の一つです。

東洋医学的養生としましては、
まず、冷たい飲み物の過剰摂取による冷秘や、
辛い刺激物を摂りすぎによる熱秘の予防には、
適度なバランスの良い摂取を心げけましょう。

また、過労睡眠不足による虚秘とならないためには、
適度な休養と十分な睡眠を確保しましょう。

そして、ストレスの蓄積による気秘には、
適度な気分転換や運動などでストレスを溜め込まない
ようにすることが肝要となります。

言いたいことも言えずに胸の奥に溜め込んでおきますと、
次第に心が耐え切れなくなりますように、
お通じも溜め込むことが体の不調に繋がります。
これまでの生活習慣を見直しながら、
快便ライフを目指して行きましょう!

2025年11月5日 2:39 PM| カテゴリー : ツボ対策


















